【テスト・バッテリー】

質問紙法と投影法は、互いに欠点を補い合う関係にあるため、テスト・バッテリーとして用いられることが多いです。以下にそれぞれの特徴を整理します。

■客観性
①質問紙法
統計的処理による客観的解釈が可能です。検査者間で解釈がずれることがありません。
②投影法
検査者の主観的解釈により、検査者間で解釈のずれが生じる可能性があります。

■集団実施
①質問紙法
可能です。
②投影法
基本的に個人検査です。

■検査者の熟練
①質問紙法
手続きが厳密に標準化されているため、熟練は不要です。
②投影法
実施・分析ともに熟練を必要とします。

■所要時間
①質問紙法
比較的短時間です。
②投影法
比較的長時間です(負担が大きい)。

■測定水準
①質問紙法
意識水準を測定。「自分が意識している自分」が測定されます。
②投影法
無意識水準まで測定。「自分が意識していない自分」まで測定されます。

■回答操作
①質問紙法
検査の意図が推測されやすいため、社会的望ましさや防御的態度による回答の歪みが生じやすいです。
②投影法
検査の意図が推測されにくいため、回答の歪みが生じにくいです(だが、この点が被検査者の負担をより大きくしています)。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【BDI(ベック抑うつ質問紙)】

BDI(ベック抑うつ質問紙)とは、ベックが開発した質問紙法です。21の質問項目で、抑うつの程度を測定するための質問紙です。

抑うつ質問紙には他に、SDS、CES-D、GSDなどがあります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【STAI(状態-特性不安検査)】

STAI(状態-特性不安検査)とは、スピルバーガーが開発した質問紙法です。生活条件により変化する一時的な不安である状態不安と、生活条件に関係なく存在する特性不安を分けて測定します。

状態不安と特性不安20項目ずつ、計40項目からなります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【MAS(顕在性不安検査)】

MAS(顕在性不安検査)とは、テイラーが開発した質問紙法です。MMPIから不安に関する質問項目を抽出して作成された検査です。

日本版は不安尺度50項目と虚偽尺度15項目からなります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【EPPS】

EPPSとは、エドワーズが開発した質問紙法です。同程度の社会的望ましさをもつ文章が2つ提示され、どちらかを強制的に選択することで、回答者の欲求を明らかにします。

例)A・他の人がびっくりするような大胆なことをしたい。
  B・他人の考えることを分析してみたい。
  →AかBのどちらかを選ばなければならない。

上記の強制選択法で、社会的望ましさによる回答の歪みを統制します。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【MPI(モーズレイ人格目録)】

MPI(モーズレイ人格目録)とは、アイゼンクが開発した質問紙法です(モーズレイは病院名)。

80の質問項目、3件法です。情緒安定性である「神経症傾向」と社会性である「外向性-内向性」の2つの性格特性を測定します。

日本版のみ、回答の歪みを判断する虚偽尺度があります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【YG性格検査(谷田部-ギルフォード性格検査)】

YG性格検査(谷田部-ギルフォード性格検査)とは、ギルフォードの性格検査を谷田部 達郎が日本人用に標準化した質問紙法です。日本で最も多く使われています。

「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3件法です。120の質問項目で12の性格特性を測定します。また、測定結果で5つの類型に分類することも可能です。

MMPIのように妥当性尺度がないため、回答の歪みを判定できません。妥当性に問題があります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【MMPI(ミネソタ多面的人格目録)】

MMPI(ミネソタ多面的人格目録)とは、ハザウェイとマッキンレイによって開発された質問紙法です。質問紙法は、あらかじめ用意された各質問項目に回答者が「あてはまる-あてはまらない」などを回答することにより、性格特性を把握しようとする検査です。

■質問紙法の利点
①統計的処理による客観的解釈
たとえば各質問項目の回答について「はい」を2、「どちらともいえない」を1、「いいえ」を0とするなどして、数量化が可能です。数量化によって統計的な処理が可能となり、客観的なデータが得られます。検査者の主観は入りにくいです。

②集団実施が可能
必要に応じて多人数に質問紙を配布し、同時に実施することが可能です。

③検査者の熟練に左右されにくい
実施方法はマニュアル化されており、検査者の熟練によって結果が左右されにくいです。

■質問紙法の欠点
①無意識的側面がとらえられない
自分が「自分のことをどう思っているか」をもとに回答するため、自分の知らない自分、つまり無意識的な側面は回答に反映されにくいです。

意識している自分の姿が反映されます(そしてその「意識している自分の姿」が、現実の自分の姿と完全に合致している保証もないです)。

②回答のバイアスが生じやすい
自分をよく見せようとしたり、社会的に望ましい回答を選んでしまったりなど、回答の歪み(バイアス)が生じる可能性があります。

③言語能力に依存
質問項目を正しく読みとることができなければ、適切な回答をすることができない。そのため、一定の言語能力を必要とします。

健常者と精神疾患をもつ者で有意差があった質問項目で構成されています。臨床現場で多く活用されています。

妥当性尺度を持ちます。自分をよく見せようとしていないか調べる質問や、めったに「はい」と答えることがない質問に「はい」と答えているかなどを調べ、回答の歪みや虚偽・脚色、精神的な混乱などがないかをチェックします。

「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3件法です。ただし、「どちらでもない」は10個以下にするように教示されます。

550の質問項目、10の臨床尺度と4の妥当性尺度で構成されます。質問項目が多く、実施に時間がかかります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【ベンダー・ゲシュタルト・テスト】

ベンダー・ゲシュタルト・テストとは、ベンダーが開発した作業検査法です。図形9つを1つずつ提示し、時間制限を設けずに模写します。

図形はゲシュタルト心理学の創始者、ウェルトハイマーによるものです。描写の正確さ、線の乱れなどに注目し、脳機能の障害を査定します。

人格の成熟度、知的側面の遅れなどを判断することもあります。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【内田クレペリン精神作業検査】

内田クリペリン精神作業検査とは、クリペリンが考案した作業を、内田 勇三郎が検査として改良した作業検査法です。

作業検査法は、被検査者に簡単な作業を行わせて、その作業結果から性格特徴をとらえる方法です。

■作業検査法の利点
①集団実施が可能
一度に多人数に実施することが可能です。

②回答のバイアスが生じにくい
性格検査と気づかれにくく、意図的な回答の歪を排除することができます。

③言語能力に依存しない
作業が中心であるため、言語が困難な対象に対しても実施可能です。

■作業検査法の欠点
①情報量の少なさ
1つの作業検査法から得られる情報量はさほど多くないです。表面的で限られたパーソナリティの側面しか判断しません。

②分析者の主観的解釈
結果の判定に分析者の主観が混入します。そのため、結果の解釈には熟練を要します。

③内容の単調さ
作業が単調かつ時間がかかるため、被検査者に負担がかかります。

ランダム数字が、上下2段に17行ずつ印刷された検査用紙を用います。また、健常者の作業曲線は定型曲線と呼ばれており、以下の特徴を持ちます。

1)最初の1分の作業量が最も多い(初頭努力)
2)最後の行(15分目)が次に多い(終末努力)
3)前半よりも後半の方が作業量が多い(休憩効果)



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社