【解離性障害】

「解離性障害」とは、意識・記憶・自我同一性など通常は統合されている機能が破綻し、個人の連続性が失われることを解離といい、解離を主症状とする障害を解離性障害と言います。

解離性障害は全般的に薬物療法の効果が期待できず、自然治癒力に頼るしかない場合が少なくありません。

症状としては、解離性障害の下位カテゴリーとして、4つが挙げられます。

①解離性健忘
心的外傷体験の後、重要な個人的情報を突然思い出せなくなってしまう。だが、脳の器質的な問題は認められず、心因性と考えられています。

自分の名前や職業など、生活史全般を忘れてしまう場合もあるが、物質の名称など、自身の生活史に関係しない知識の多くは保持されています。

話したり読んだり考えたりする能力は失われていないため、日常生活に大きな支障は生じません。発症も回復も突然起こる場合が多いです。

②解離性遁走(かいりせいとんそう)
突然仕事や家庭を放り出して、日常生活から離れて放浪し、新しい自我同一性を身につけてしまいます。

新しい名前を名乗り、新しい家や仕事を持ち、性格さえ変わってしまうこともあります。過去の記憶は想起できないことが多いです。

強い心的外傷により、それまでの自我同一性を喪失するために起こると言われています。

③解離性同一性障害
1人の人間に少なくとも2つ以上の分離した自我状態が存在し、それらが異なる時に出現し、記憶・感情・行動などを支配することを言います。

かつては多重人格障害と呼ばれていたものです。人格間の交流は無いため、ある人格の間に生じた出来事は、別の人格では記憶していないです。

解離性同一性障害は、その特徴ゆえに世間の注目を集める「流行病」の側面があります。

安易に複数の人格の識別をすることは、人格の統合ではなく解体を助長することに繋がり、害となりえます。

反面、カウンセラーが冷淡な姿勢でクライエントさんの「主観的な人格交代の体験」を否定することは、クライエントさんへのカウンセリングへの不信を招き、本質的な問題を悪化させる可能性もあります。

解離性同一性障害が非常に稀な障害であることを前提に、慎重な診断のもと適切な情報提供(心理教育)が求められています。

④離人症性障害
自分が自分の身体から抜け出て、離れた所から自分を眺めているように感じる(離人体験)や、自分の手足の大きさが急激に変化したように感じるなど、自分の身体が自分のものではなくなってしまう感覚が生じることです。

妄想や幻覚に近いが、現実検討能力は正常に保たれています。

カウンセリングとしては、クライエントさんの精神状態にアプローチして、心のケアをしていくことが有効ではないかと考えております。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【身体表現性障害】

「身体表現性障害」とは、医学的に説明不能の身体症状や身体的なとらわれを特徴とする疾患の総称です。

医学的に検査をしても身体的な原因は発見されず、身体症状の原因は不安や葛藤、ストレスなど心理的要因と考えられます。

身体表現性障害には、特定の行為や責任を回避できたり、周囲の心配や関心を得たりできる疾病利得が隠されている場合があります。

ただし、意識的に病気を偽っているわけではない点に注意したいです。また、特有の性格傾向としてアレキシシミア(アレキシサイミア)があげられます。

身体症状や事実関係は述べられるが、自身の内的な感情や葛藤を表現することは困難です。そのため、内的な感情や葛藤が身体症状となって現れると考えられています。

症状として、身体表現性障害の主な下位カテゴリーに以下の5つがあります。

①転換性障害
知覚や運動の麻痺、具体的には視力の喪失や失声、手足の痺れや失立・失歩などの症状が現れる。神経系の異常が疑われるが、神経系の異常は発見されない。

②身体化障害
医学的には身体因を見いだせない頭痛、疲労感、アレルギー、腹痛、頻尿などの複数の身体症状が、数年間反復的に持続します。

③疼痛性障害
激しい苦痛を訴えるが、医学的検査をしても異常が認められない。痛みは主観的な体験であるため、適切な診断を下すことが困難です。

④身体醜形性障害
自身の外見(顔のしわ、毛深さ、鼻の形や大きさなど)が異常と思い込んでしまう。整形手術を繰り返し受ける者もいるが、苦痛が和らぐことは少ないです。

⑤心気症性障害
心身の些細な感覚に敏感に反応し、重大な病気ではないかと思い込んでしまう。自分の意見を支持してくれる診断を受けるまで、医療機関を転々とする者もいます。

カウンセリングとしては、身体表現性障害の心理的援助は、クライエントさんが抱くストレスや不安に適切に対処できるように、暖かく受容しながら見守ることが有効ではないでしょうか。

身体表現性障害は、かつての心身症に代わる新しい概念ですが、定義が安定していません。そのため「心身症は身体表現性障害」と表現する出版物もあれば「心身症は身体表現性障害と区別される」と表現する出版物もあります。

心理的要因の改善を重視する立場に前者が、身体症状の改善を重視する立場に後者が多いようですが、確定は出来ておりません。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【パニック障害】

「パニック障害」とは、さまざまなストレスなどの心理的要因が主な原因とされています。

突然、心拍数が上がり全身が緊張して冷や汗をかき、気が遠くなる状態になり、自分はこのまま気が狂ってしまうのではないか、死んでしまうのではないかという恐怖に陥る時もあります。

また、突然生じる急激な動悸・発汗・息苦しさ・震えなどのパニック発作を主症状とします。

いつ発作が起こるかわからないため、発作の再発を恐れる予期不安が強くなり、予期不安のために外出や雑踏を恐れる広場恐怖を併発する場合が多いです。

特に、発作が多くみられるのは電車などの乗り物の中で、また発作が起こるのではないかという恐怖(予期不安)で、電車に乗れなくなったり、一度、発作が起きた場所へは行けなくなったりすることがあります。

パニック障害は、かつて「心臓神経症」や「不安神経症」と呼ばれていましたが、1980年に病名を「パニック障害」に統一すると、世界的な取り決めが行われました。

アメリカでは100人に3人の割合で発症しており、日本でもほぼ同率の患者がいると考えられています。

今後、パニック障害に対する認識と理解が深まってくれば、患者数はさらに多くなると考えられます。

カウンセリングとしては、クライエントさんのパニック障害にアプローチするのに、クライエントさん自身のリソースにアプローチするのが有効ではないかと考えております。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【強迫性障害】

「強迫性障害」とは、嫌な思考、心的イメージ、言葉などが、何度も繰り返して意識にのぼり、それらを認めながらも、気にすればするほどますます強い不安や嫌な思いを伴う状態に陥ることを言います。

このような繰り返し意識にのぼる観念を「強迫観念」といい、それを払拭するために儀式的な行為(強迫行為)をします。

非合理的な思考である強迫観念と、強迫観念によって引き起こされる強迫行為を繰り返すことを主症状としています。

例えば、自分の手が非常に臭いという強迫観念のために、手を何度も何度も洗うと言う強迫行為を繰り返してしまう。

また、鍵をかけたかどうか何回も確かめる。本をアイウエオ順に並べる。ある物がしかるべき所に無いとき、きっちりと直すなどといった行為を指し、これらの行為で不安感は軽減されるが、この行為自体が苦痛になったりします。

本人は強迫観念が非合理だとわかっているが、強迫行為をやめることができず、疲労してしまうことが多いといったことが多いです。

いずれも本人が自覚しているという点で、精神病とは区別されています。また、アメリカでは、人口の2%にみられるとも言われていて、生活に支障をきたさなければ、珍しい症状ではありません。

カウンセリングとしては、クライエントさんの「強迫観念」にアプローチして、「とらわれ」からの解放を促すようなアプローチが有効ではないかと考えております。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【ヒステリー】

「ヒステリー」とは、無意識の葛藤や欲求不満が身体的・精神的症状となってあらわれます。これらの症状は、暗示や状況によって変化し、演技的で葛藤回避や疾病利得など心理的な意味を持ちます。

ヒステリーには、運動麻痺・知覚麻痺・痙攣(けいれん)・失立・失歩・失声などの身体症状に転換される転換型ヒステリーと、もうろう状態・健忘・記憶喪失など精神症状があらわれる解離型ヒステリーがあります。

カウンセリングとしては、クライエントさんの精神状態にアプローチして、心のケアをしていくことが有効ではないかと考えております。

【チック】

「チック」とは、身体の特定の筋肉群に生じる不随意的、自動的で急速な反復運動反応であり、神経性習癖の一種です。

脳に器質的な問題がある器質性チックと、心理的な問題がある心因性チックがあります。また、チックの生じる部位はさまざまで、代表的なものに、まばたき、ほほや口、鼻の回りをピクピクさせる、足踏みなどの身体運動性チックがあります。

ストレスや不安などの心理的緊張によって悪化するので、くつろいだり何かの活動へ没頭したりすることによって軽減されると言われています。

カウンセリングとしては、クライエントさんの心理的側面にアプローチして、心のケアをしていくことが有効ではないかと考えております。

【発達障害(トゥレット症候群)】

「トゥレット症候群」とは、チックとは異なり脳の機能障害であり、トゥーレット症候群やトゥレット障害と呼ばれる場合があります。

2005年に施行された発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、LD(学習障害)、ADHD(注意欠如多動性障害)その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」としています。

トゥレット症候群は、「その他これに類する脳機能障害」に含まれます。トゥレット症候群は、自閉症やその他の発達障害と同様に正しい理解と支援を必要とする障害です。

日本では認知度も低く、トゥレット症候群を診断できる医師も少ないのが現状です。周囲の理解がないために、誤解されて悩んだり、症状を悪化させたりしているクライエントさんがたくさんいるのが現状です。

また、男児の方が女児に比べて発生率が高いと言われています。

主な症状にチックがありますが、かつてチックはストレスや不安が原因で起こると考えられていたため、トゥレット症候群の発症を「母親の愛情不足」や「育て方に問題がある」など誤解されることが多かったです。

しかし、トゥレット症候群は、脳内神経伝達物質のドーパミンの過剰活動が原因とされていて、育て方や親の愛情は全く関係ありません。

トゥレット症候群は平均して6~8歳ぐらい、遅くても14歳ぐらいまでに発症します。

まばたき・首を振るなどの単純チックの症状から始まり、咳払い・鼻ならしなどの音声チックの症状、さらに不謹慎な言葉を無意識に言ってしまう複雑チックの症状が出るようになります。

他の障害を併発する場合も多く、ADHD(注意欠如多動性障害)や脅迫性障害は、特に多い併発症とされています。

その他、LD(学習障害)・睡眠障害・気分障害などがみられます。

診断としては、症状と経過をみて診断が行われると思われます。さまざまな運動チックと1つ以上の音声チックが長期に渡り続く場合に、トゥレット症候群と診断される可能性が高いと思われます。

抗ドーパミン作用の強い神経遮断薬などの薬を服用して、症状を改善させることも必要ですが、それと共に早めに適切な療育を行うことは、非常に重要となるでしょう。

薬物療法や併発症に応じた療育を行う場合もあります。

トゥレット症候群の症状は、改善したり悪くなったりを繰り返しながら10歳代後半には改善する場合が多いのですが、完全に治癒することは難しいかも知れません。

ですので、「治る」「治らない」ではなく、トゥレット症候群のお子さんの一人ひとりの特性を尊重し、周りへの理解と暮らしやすい環境つくり、そして困難を軽減していけるようなサポートをカウンセリングを通して、トゥレット症候群のお子さんやご家族へして行けたらと考えております。

【発達障害(LD「学習障害」・ADHD「注意欠如多動性障害」】

「発達障害」のうち、全体的な能力や機能は年齢相応であるにもかかわらず、読み書きや運動など部分的な能力や機能で著しい遅れが見られる障害を、特異的発達障害と言います。

他の発達障害と同様に、脳の機能障害が推測されています。特に男子に多くみられ、代表的な障害にLD(学習障害)とADHD(注意欠如多動性障害)があります。

【LD(学習障害)の症状】
LD(学習障害)とは、全体的な知的能力に遅れはなく平均的なIQを示すが、読む・聞く・話す・書く・計算するなど、ある特定の学習能力に著しい困難を示す障害です。

そのため「読めるが書けない」「書けるが話せない」ということが起こります。

【ADHD(注意欠如多動性障害)の症状】
ADHD(注意欠如多動性障害)とは、不注意・多動・衝動性という3つの特徴が、同年齢の子供と比較して顕著な障害を示す障害です。

7歳以前より見られ、複数の状況で存在し、社会生活で支障が生じている場合に診断されます。落ち着いて座っていることが困難だったり、手足をそわそわ動かしたり、衝動的に大声をあげたりします。

ADHD(注意欠如多動性障害)に関しては、多動や衝動性を抑える薬物療法による援助が行われますが、副作用も報告されているため慎重な処方が求められます。

併用して行動療法を用いて、適応行動を学習していく必要があると思います。

LD児やADHD児は、一般的に「できて当然」と思われる行為に困難を示すため、日常的に失敗体験が多く、劣等感を抱きやすいです。

学校での集団生活になじめず、時としていじめにあってしまうこともあります。そのため、親への心理教育や教師へのコンサルテーションによって、LD(学習障害)やADHD(注意欠如多動性障害)に関する十分な理解を得る必要があるでしょう。

通所なども最大限に活用して、子供の生活が多方向から支援され、過ごしやすい環境を整えて行くことができれば、症状やそれに伴う劣等感を和らげ、適応を促すことができるでしょう。

【反抗挑戦性障害と行為障害】

周囲に対して挑戦的で、反抗的な行動を当然のごとく行ってしまう者を反抗挑戦性障害と言います。ADHD(注意欠如多動性障害)の子供の中には、9歳頃からこの反抗挑戦性障害を併発する者が多いと言われています。

さらに、反抗挑戦性障害の子供の問題行動がエスカレートすると、万引きや過度の暴力などの行為障害に発展するおそれもあります。

そのため、ADHD児に反抗挑戦性障害が併存するか否かを早期に発見する為にも、早めに適切な療育を行うことは、非常に重要ではないかと考えております。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【発達障害(ASD「自閉症スペクトラム障害、アスペルガー症候群」・広汎性発達障害)】

「発達障害」とは、先天的に幼少期から主に認知や行動面で発達の遅れが見られることを、発達障害と言います。

かつて発達障害は、親の不適切な養育やしつけ不足、虐待などで生じるとされていましたが、現在では完全に否定されており、脳の機能障害と考えられています。

つまり、発達障害は親の養育態度とは無関係です。

発達障害は、IQ70以下を示す知的障害(精神遅滞)、自閉症スペクトラム障害、特異的発達障害の3つに分類されます。

【自閉症スペクトラム障害と3つの行動特徴】

自閉症スペクトラム障害は、発達障害の1つです。かつて、(DSM-IV-TRまで)は、広汎性発達障害と呼ばれており、自閉性障害、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害などの下位分類が存在していました。

これらの下位分類は、程度の差はあれ、3歳以前に以下の3つの特徴を持ちます。

①社会的相互作用の障害
他者と目を合わせられない。対人関係の形成・維持の困難さ。情緒的相互性の欠如。

②コミュニケーションの障害
話し言葉の遅れ。会話を開始し継続することの困難さ。言葉を覚えるのが困難で、覚えても会話がかみ合わない。

③想像力の障害
限局された興味対象への過度な集中。習慣へのこだわり。常同行動(同じ遊びや行動を続けること)。

上記以外にも、極端な感覚過敏や感覚鈍麻、そして視覚過敏や視覚鈍麻を示すことがあります。特に、突然の大きな音で混乱し、パニック状態に陥ることがあります。

【広汎性発達障害の下位分類】

①自閉症障害
3つの行動特性が3歳頃までに明確に認められます。知的障害(IQ70以下)を伴う場合が多いが、伴わない場合は高機能自閉症と呼び、区別することもあります。

②アスペルガー症候群
コミュニケーションの障害が少なく、知的障害・言語障害を伴わない者をアスペルガー症候群と呼ぶ(高機能自閉症との明確な区分はなされていない)。

③レット症候群
女児のみ発症する。5ヶ月頃までは正常発達をたどるが4歳頃に頭部の成長が減速し、重度の精神遅滞と自閉性傾向を持つようになります。

④小児期崩壊性障害
2歳頃まで正常発達をたどるが、3歳以降正常発達が停止し退行して行きます。

⑤特定不能の広汎性発達障害
上記の基準を満たない広汎性発達障害です。日本ではこのカテゴリーも、慣例的にアスペルガー症候群として診断されることが多いです。

DSM-5において、このカテゴリーは自閉症スペクトラム障害から除外されました(このカテゴリーのうち、想像力の障害がみられない者については、社会コミュニケーション障害という新たな診断名がつきました)。

【広汎性発達障害から自閉症スペクトラム障害へ】

広汎性発達障害の下位部分はDSM-5以降、自閉症スペクトラム障害に統合されました。

自閉症障害、アスペルガー症候群、高機能自閉症などさまざまなカテゴリーが生み出されたが、概念の重複がみられ厳密な区分が困難でした。

例えば、どの程度の言語障害の少なさをもってアスペルガー症候群と診断するか、その判断が困難であることは想像に難しくありません。

高機能自閉症とアスペルガー症候群が同じとみなすか否かについても諸説あり、概念が未整理であることは明らかだからです。

また、周囲の環境や対応・養育の仕方によって困難が重くなったり、軽くなったり変化するため、単純にカテゴリーの枠に当てはまらない場合もあるからです。

カテゴリーに分類することによって、診断名だけで障害を判断してしまい、子供の個々の姿を見失ってしまう危険性もあります。

スペクトラムとは連続体という意味を持ちます。連続体とは、明確な境界線のない、大きな枠組みのことです。

自閉性障害もアスペルガー症候群も、他の広汎性発達障害も、いずれも3つの行動特徴をもち、程度の差はあれ同じ特徴を持った連続体であると言う考えに基づき、カテゴリー分類を廃したものが自閉症スペクトラム障害です。

自閉症スペクトラム障害というグラデーションの濃淡を、子供が揺れ動いているようなイメージで捉えると理解しやすいと思います。

診断名だけで判断せず、日々変化する子供の様子を見守りながら、柔軟に適切に対応する姿勢が求められると思います。

なお、自閉症スペクトラム障害への統合を懸念する声が存在しています。特にアスペルガー症候群という診断名が無くなることで、アスペルガー症候群に対するさまざまな知見や成果が失われてしまうことを懸念する声が強いです。

既にアスペルガー症候群と診断されている人に不要な混乱を与える可能性もあります。

また、統合にあたって特定不能の広汎性発達障害が除外されましたが、日本ではこのカテゴリーも慣例的にアスペルガー症候群として診断するケースが多かったため、結果として診断の枠が狭まったことになります。

いずれにせよ、自閉症スペクトラム障害はDSM-5での大きな変更点であるため、今後の動向や最新情報に注意を払う必要があることは間違いないでしょう。

発達障害は、脳の機能障害が予測されているため、障害を根底から改善することは難しく、薬物療法は必ずしも有効ではないと言えるでしょう。

そこで、「治る」「治らない」ではなく、発達障害児の一人ひとりの個性を尊重し、発達障害児にとって暮らしやすい環境つくりと、適応力を育むことで困難を軽減していけるようなサポートをカウンセリングを通して、発達障害児やご家族へサポートして行けたらと考えております。

その為には、療育がサポートの基本となると考えられます。療育は行動療法的なアプローチが基本となり、適応行動を学習していく形になると思います。

また、TEACCH(Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped CHildren)は自閉症児を支援するための個別教育プログラムで、広く利用されています。

言語ではなく絵で見せて視覚で理解させるなど、自閉症の行動特性に即した対応が重要ではないでしょうか。

自閉症児は、その行動特性から周囲の偏見やいじめなどに合うことがあり、そこから不安障害・気分障害・睡眠障害などの二次的な問題が発生する場合があります。

カウンセリングは主に、この二次的な問題に対して行われると思われます。

家族への心理教育も重要となるでしょう。養育者は自身の養育を責めることが多いと思いますが、自閉症は冷淡な親の不適切な養育で起こる訳ではないことを正しく理解して頂く必要があります。

また、養育の重要性を認識してもらい、親が全ての世話をするのではなく、日常生活や身の回りのことはできるだけ自閉症児自身で行わせることも、将来の自立のために重要になるでしょう。

教育現場では、通所による支援が期待されています。適切な療育によって、多くの自閉症児は成人後に自分の役割を手にすることができるでしょう。

その行動特性をむしろ利点として、集中が必要とされる作業が求められる職に就き、生活をする者も多いと思います。

そういった将来への展望も、自閉症児や家族の療育への動機づけを高めるために重要ではないかと考えております。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社

【パーソナリティ障害】

「パーソナリティ障害」とは、属する社会や道徳や価値観から著しく逸脱し、偏ったパーソナリティを持つがゆえに、社会生活における持続的な苦難が生じている障害のことです。

その特徴としては、3つの群としてA群、B群、C群に分けられ、さらに10の個別のパーソナリティ障害に分類できます。

【A群 奇異で風変わりな行動】を示す群です。統合失調症との類似性があります。

①妄想性パーソナリティ障害
他者の言動を悪意あるものと感じてしまう。極端に疑い深い。幻覚が存在しない点で統合失調症と異なる。

②シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害
孤立した生活態度で社会的な関係を欲したり楽しんだりしない。平板な感情、他者への無関心さが特徴です。

③失調症パーソナリティ障害
迷信を信じ、奇妙な行動や言動をとる。奇妙な考え方と話し方のために、他者との親密な関係を築くのが難しい。

【B群 派手で突発的な行動】を示す群です。

①境界性パーソナリティ障害
対人関係、自己像、感情の不安定さが特徴です。他者や自己に対する理想化とこき下ろしがみられる。そのため、浪費、性行為、薬物乱用、無謀な運転、過食、暴力、自傷行為といった激しく衝動的で、自己破壊的な行動をする反面、見捨てられることを避けるために、なりふりかまわぬ努力を行ったりする。慢性的な空虚感を抱きやすい。

②演技性パーソナリティ障害
芝居がかった派手な行動、独特の服装、化粧、髪の色で、自分に注意を引こうとする。注目の中心にいないと不愉快になる。

③自己愛性パーソナリティ障害
誇大性、過剰な賞賛の要求、他者への共感の欠如を特徴とする。非難に対して非常に敏感で、失敗をひどく恐れる。

④反社会的パーソナリティ障害
他者の権利を無視して侵害する不適応行動(虚言、窃盗、放火、器物破損、暴力など)。無責任で怒りやすい。

【C群 不安や恐怖を感じやすい】群です。不安障害との類似性がある。

①回避性パーソナリティ障害
他者からの批判や拒絶を恐れるあまり、確実に自分が好かれる状況でなければ他者と密接な関係を築くことができない。

②依存性パーソナリティ障害
自主性を欠き、他者に必要以上の助言を求める。他者からの分離に対しては、極度の見捨てられ不安を感じる。

③強迫性パーソナリティ障害
完全主義者で、柔軟性がない。細かい規則・予定にとらわれる。また完全主義を他者にも期待するため、人間関係が限られる。

上記のような10の分類にパーソナリティ障害を分けることができます。
カウンセリングでは、パーソナリティ障害の方(本人)を変えさせると言う事は、非常に難しいのが現状です。

ですので、パーソナリティ障害の方と関わる人たちが、どの様な関わり方をしていったら良いかを、まず考えて行きたいと思います。

そして、クライエントさんの直面している生活上の問題を、一つひとつ改善し、適応的な生活を支援して行くことが有効ではないかと考えております。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社