【短編小説】 ― 幼馴染と夏祭りの想ひ出。 ― 『夏祭り』


※2020年5月に連載しました【短編小説】 ― 幼馴染と夏祭りの想ひ出。 ― 『夏祭り』を纏めたものになります。

《あらすじ》

  高校三年生の頃、友達と花火大会の約束をしていたハヤトは、約束した八代神社へ向かう途中、幼馴染の女の子と遭遇した。彼女の名前はサツキ、小学生時代からの幼馴染である。

  ハヤトはサツキと同じ高校に通っていたが、高校に進学してからは話し掛けることは無かった。それは彼女が皆んなから慕われる、そんな憧れの存在だったからだ。

  しかしハヤトは、サツキとお祭りの屋台で遭遇し、彼女の履いていた草履の鼻緒が切れた部分を直すこととなったのだ。その後、二人は幼馴染の頃に楽しんだお祭りを、一緒に楽しむことになるのだった。

  そして、その二人の様子は周りから観ると、あたかも恋人のように感じられたのであった。

▼目次

第01話 彼女との遭遇
第02話 久しぶりの会話
第03話 浴衣姿の彼女
第04話 金魚すくいの誘い
第05話 幼馴染とデート
第06話 金魚すくいの勝負
第07話 勝負の結末!
第08話 想い出はなし
第09話 突然の着信音!
第10話 彼女との時間
第11話 一本杉に向かう途中
第12話 彼女を背中に背負い
第13話 友達との約束
第14話 線香花火
第15話 長岡の花火大会
第16話 彼女の気持ち「最終回」

第01話 彼女との遭遇

 今でも忘れられない、あの夏の日の出来事を・・・・・・。

 僕は今でも思い出すんだ。そう、あれは高校三年生の頃の出来事だ。何時もの僕は友達に誘われ、近所で行われる花火大会へと向かった。お祭りの屋台でごった返すひと達を尻目に、僕は友達と約束した八代神社の一本杉へと急いだ。

 その途中で僕は、同級生の女の子を見掛けたんだ。その子は僕と幼馴染の女の子で、僕と違って友達皆んなから慕われ、皆んなが憧がれるそんな存在だった。だから僕は同じ高校に通っていたけど、高校に進学してからは、話し掛けるのにちょっと悪い気がしたんだ。

 今日は花火大会でお祭りと言う事もあり、彼女は浴衣姿に草履と、何時にも増して艶やかな姿だった。すると彼女の草履の鼻緒が切れ、困った表情を彼女は浮かべていた。僕は彼女に声を掛けていいのか迷った。そんな彼女は僕を見つけ、救いを求める眼差しをしたんだ。

 僕は胸がドキドキして、頭が真っ白になってしまった。

つづく・・・

第02話 久しぶりの会話

 友達と約束した花火大会に向かう途中、僕は幼馴染の女の子と遭遇した。そして彼女から声を掛けられたのだ。彼女の名前はサツキ、小学生時代からの幼馴染だ。サツキは花火大会の今日、浴衣姿に草履を履いて来ていたのだが、草履の鼻緒が切れ、僕に助けを求めて来た。

 彼女の視線を感じた僕は頭の中が真っ白になりながらも、彼女の方へと人混みを掻き分け近づいて行ったのだ。するとサツキから、こんな言葉を掛けられた。
「ハヤトくん。久しぶり、わたしの草履の鼻緒が・・・」

 そう言うとサツキは僕に、自分の履いていた片方の草履を僕に手渡したのだ。僕は草履の切れた部分を観て、サツキにこう言った。
「サツキ・・・ 慣れない草履、履いて来るからだよ、しょーがない」

 こう言って僕はポケットからハンカチを出し、鼻緒の切れた部分を直していた。その間、サツキの右手が僕の左肩に寄りかかり、僕の心臓の鼓動はドキドキしていたのだ。そしてこの鼓動をサツキに気づかれないか、僕は気が気ではなかった。

つづく・・・

第03話 浴衣姿の彼女

 幼馴染のサツキから渡された草履を僕がドキドキしながら直していると、サツキからこんな言葉を掛けられた。
「ハヤトくん。ハヤトくん、わたしのこと学校で避けてるでしょ!」

 こう言ってサツキは、僕の顔を覗き込んだ。僕はドキドキしながらも頭の中で、何と答えたら良いか言葉を探した。そしてサツキにこう言ったのだ。
「サツキ・・・ サツキはクラスの人気者だからさぁ、話し掛けにくいんだよ」

 そう僕が言うと、サツキは僕から草履を受け取り嬉しそうな顔をして、こう言った。
「ハヤトくん。やっぱりハヤトくんって、手先が器用なんだ!」

 この時、僕は嬉しかった。それは幼い頃、一緒に遊んだ時の事をサツキが覚えてくれていると思ったからだ。僕は試しに、サツキにこう言った。
「サツキ・・・ 何で知ってるんだよ!」

 サツキに僕がこう言うと、サツキは嬉しそうに、こう答えたのだ。
「ハヤトくん。昔、一緒に折り紙したでしょ!」

 この言葉を聴いて、僕は嬉しくなった。するとサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。昔みたいに、一緒に金魚すくいしようよ?」

 僕は友達との約束が気になったが、こう答えたのだった。
「サツキ・・・ わかったよ、サツキには負けないからな!」

 そう言うとサツキは、にっこり笑った。藍色の浴衣と髪を結い上げたサツキの姿はとても新鮮で、見惚れてしまった。

つづく・・・

第04話 金魚すくいの誘い

 サツキから金魚すくいの誘いを受けた僕は、ドキドキしながらもサツキの横に並んで、一緒に屋台へと向かった。するとサツキが僕に、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。ハヤトくん、昔から金魚すくい上手だったよねぇ?」

 そうサツキが言うと、僕は少し照れながらサツキにこう言った。
「サツキ・・・ サツキの方こそ、成績いいし運動も出来るから・・・」

 僕がこう言うと、サツキは僕の顔を見つめてこう言ったのだ。
「ハヤトくん。せっかくのお祭りなんだから学校の話は……わたしとじゃ嫌だったかなぁ?」

 僕は焦って、サツキにこう言葉を掛けた。
「そんな事ないよサツキ、ごめん」

 そう僕が言うと、サツキはちょっと笑いながら僕に、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。冗談よ、でもハヤトくんがわたしの事、どう思っているか知れて嬉しいな・・・」

 こうサツキが僕に言うと、僕も嬉しくなったのだ。それはサツキが自分の事を気に掛けてくれていると言う事が分かったからだ。

 こうして二人は屋台まで、話に花を咲かせ向かったのだった。それはまるで、周りから見ると恋人同士のように見えた事だろう。

つづく・・・

第05話 幼馴染とデート

 サツキと一緒に金魚すくいの屋台へと向かった僕は、屋台まで来ると屋台のおじさんに、こう話し掛けた。
「すいません、ふたり分の網を・・・」

 こう僕が屋台のおじさんに話し掛けると、屋台のおじさんは二人に向かってこう言ったのだ。
「お、若い衆。今日は彼女とデートか?」

 そう屋台のおじさんが、僕達に向かって言って来たのだった。その時、僕は何と答えたら良いか迷った。するとサツキが、屋台のおじさんに向かってこう答えたのだ。
「わたし達、幼馴染なんです。今日は昔みたいにデートかな・・・」

 サツキのこの言葉を聴いた僕は、サツキが自分の事を幼馴染として見ているのか、それともひとりの男性として見ているのか、とても気になったのだった。

 そして屋台のおじさんから渡された金魚すくいの網と椀を、僕がサツキに手渡すと、サツキはにっこり笑い嬉しそうな顔をしたのだ。そのサツキの表情を見て、僕はサツキにこう言ったのであった。
「よーし、サツキ。昔みたいに、金魚すくい勝負だからなぁ・・・」

 そう僕がサツキに言うと、サツキも僕に向かってこう言い返したのだ。
「わたしも、ハヤトくんに負けないんだから・・・」

 この時、僕は幼い頃にタイムスリップしたかの様な錯覚に陥ったのであった。

つづく・・・

第06話 金魚すくいの勝負

 お祭りの屋台で屋台のおじさんから、金魚すくいの網と椀を受け取った僕とサツキは、昔のように金魚すくいの勝負をする事となった。そして僕がサツキに、こう言葉を掛けた。
「この勝負、勝ったらどうする?」

 こう僕が言うと、サツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「それじゃ、ハヤトくん。あんず飴を賭かけて、勝負しようよ!」

 こう嬉しそうに、サツキは僕に答えたのだった。その言葉を聴いた僕はサツキに向かって、こう言い返した。
「よーしわかった。サツキには負けないぞ!」

 こう僕はサツキに言い、僕はサツキに良い所を見せようとデメキンの金魚ばかり狙って掬おうとした。するとサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。その黒いデメキン、難しいよ」

 こうサツキが僕に言うと、僕はサツキに向かってこんな風に言った。
「 サツキ・・・ 俺の方が上手いから、これはハンデだよ!」

 こう真剣な眼差しで、僕はサツキに答えた。その時、既にサツキは二匹の赤い金魚を掬っていたのだ。

 しかし僕は、サツキに良い所を見せたい一心でデメキンばかり狙い、一匹の金魚も掬う事が出来なかったのであった。

つづく・・・

第07話 勝負の結末!

 サツキと金魚すくいの屋台で金魚すくいの勝負をした僕は、サツキに良い所を見せようとデメキンの金魚ばかり掬っていたのだ。

 しかし僕は、なかなかデメキンの金魚を掬う事が出来ず、サツキとの勝負に負けてしまった。そして一匹の金魚も掬えずに、網は破れてしまったのだ。

 僕は悔しくて、サツキにこう言った。
「ちっくしょー! このデメキン、活きが良すぎるよ!」

 こう僕がサツキに向かって話し掛けると、それを観ていたサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。ハヤトくん、調子に乗ってデメキンばかり掬ってるんだもん!」

 こうサツキが僕に笑いながら答えた。すると僕は、サツキに向かってこう言い返した。
「おっかしーなぁ? 昔はもっと、上手かったんだけどなぁ・・・」

 僕がサツキにこう言うと、サツキはすかさず、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。金魚すくいの約束、覚えてるよねぇ?」

 こんな風に僕に向かって、サツキは言って来た。僕は悔しかったがサツキとの金魚すくいの勝負に負け、サツキにあんず飴をご馳走する事となったのだ。

 こうして二人は、あんず飴の屋台の方へと向かったのであった。

つづく・・・

第08話 想い出はなし

 金魚すくいの勝負でサツキに負けた僕は、サツキにあんず飴をご馳走するため、二人であんず飴の屋台へと向かった。

 あんず飴の屋台までは、金魚すくいの屋台から中央の通りを挟んで反対側にあった。僕はサツキの手を取りサツキと逸れないよう、ごった返すひと達を掻き分け、あんず飴の屋台の方へと進んで行った。

 その時の僕とサツキは二人で昔、一緒に行ったお祭りを思い起こし、懐かしいこんな会話を交わしたのだ。
「サツキ・・・ そう言えばサツキ、ヨーヨー釣り好きだったよなぁ?」

 こう僕がサツキに話し掛けると、サツキも僕に向かってこう言った。
「ハヤトくん。ハヤトくんだって、射的に夢中だったでしょ!」

 こんな会話を僕とサツキが交わしていると、あんず飴の屋台の目の前まで辿り着く事が出来たのだ。

 その時突然、僕のスマホの着信音が鳴り、僕は自分のスマホをポケットから取り出し、誰からの連絡か確認してみることにしたのであった。

つづく・・・

第09話 突然の着信音!

 あんず飴の屋台の目の前まで辿り着いた僕とサツキであるが、僕のスマホの着信音が突然鳴ったのだ。

 僕は慌てて自分のスマホをポケットから取り出し、そして見て観る事にした。すると、『LINE』のメッセージである事がわかったのだ。

 僕がその内容を確認すると、八代神社の一本杉で約束していた友達からの連絡である事がわかった。急いで僕がその内容を読むと、次の様な内容であった。
「ハヤト、約束の18時過ぎてるぞ! 早く来いよ、連絡待ってるからな・・・」

 こう書かれてあったのだ。この様子を観ていたサツキは僕に向かって、こう言った。
「ハヤトくん。もしかして今日のお祭り、友達と約束してたのかなぁ?」

 サツキが僕に向かってこう言うと、僕はサツキの方を向いて、こう答えたのだ。
「ごめんサツキ、実は友達のユウタと花火大会の約束を・・・」

 こう僕がサツキに言うと、サツキは僕に向かって、こう話し出した。
「ハヤトくん。わたしも一緒に行っていいかなぁ?」

 サツキはこんな風に僕に言ったのだ。僕はとても焦った。そしてどう答えたら良いか迷ったのだ。

 しかし、あんず飴の件もあり断る事が出来ず、一緒に八代神社の一本杉へと向かう事になったのであった。

つづく・・・

第10話 彼女との時間

 ユウタからの『LINE』のメッセージを受け取った僕は、サツキと一緒にユウタが待つ一本杉へと向かった。その途中、僕はサツキが自分の事をどう思っているのか、とても気になったのだ。

 そして、こんな言葉を僕はサツキに投げ掛けた。
「サツキ・・・ 金魚すくいの屋台で、おじさんに言った言葉、覚えてるか?」

 こう僕がサツキに向かって言うと、サツキは何の躊躇もなく、こう答えたのだ。
「ええぇ・・・」

 すると僕は、恐るおそるこう切り出した。
「ええぇ、て……それは幼馴染って事かなぁ? それとも、ひとりの男性としてデートしてるって意味かなぁ?」

 こんな言葉が僕の口から出て来たのだ。自分でも不思議なくらい、この言葉がすんなり出て来た。

 するとその言葉を聴いたサツキは少し間を置いて、こう答えたのだ。
「ハヤトくん。幼馴染なんだから、わたしの気持ち、わかるでしょ!」

 サツキは僕に向かって、こう言った。この時の僕の気持ちは複雑だった。それはサツキに対する自分の気持ちが、自分でもハッキリとはわからなかったからだ。

 しかしサツキと一緒に居ると昔の頃のように、素直に自分を出せるのは間違いない。こうして二人は、一本杉がある八代神社の階段を登って行ったのであった。

つづく・・・

第11話 一本杉に向かう途中

 友達のユウタが待つ一本杉へと向かった僕とサツキは、八代神社の階段を登っていたのだが、その途中でサツキの草履の鼻緒がまた切れてしまった。

 そしてサツキは階段の途中で、しゃがみ込んでしまったのだ。それを見た僕はサツキにこう言った。
「サツキ、大丈夫か……その草履、ちょっと見せてくれる?」

 こう僕がサツキに言葉を掛けると、サツキはとても悲しそうな表情をして、僕にこう答えたのだ。
「ハヤトくん、ごめん。せっかくハヤトくんが直してくれたのに・・・」

 サツキがこう言うと、僕はサツキにこんな言葉を掛けた。
「俺の方こそ、ごめん。ちゃんと直せなくて・・・」

 僕は申し訳なく、サツキにこう言ったのだ。そして僕は草履の鼻緒が切れた部分を見て、サツキにこう言った。
「サツキ・・・ この草履の鼻緒、簡単には直せないよ・・・」

 こう僕がサツキに言うと、サツキは今にも泣き出しそうな表情を浮かべたのだ。僕は何とかしなければと思い、咄嗟にこんな言葉をサツキに掛けた。
「サツキ・・・ 階段の上まで、俺が背負って行くよ!」

 この言葉を聴いたサツキは、少し嬉しそうな表情を僕に見せ頷いたのだ。こうして僕とサツキの二人は、ユウタの待つ八代神社の一本杉へと向かったのであった。

つづく・・・

第12話 彼女を背中に背負い

 サツキを背中に背負いユウタの待つ八代神社の一本杉へと向かった僕は、神社の階段を一段いちだん登って行った。するとサツキは申し訳なさそうに僕にこう言ったのだ。
「ハヤトくん。ごめんね、重くない?」

 サツキがこう言うと、僕はサツキに向かって、こう言い返した。
「大丈夫だよ、サツキ。あんず飴、ご馳走出来なかったし・・・」

 こう僕はサツキに答えた。その言葉を聴いたサツキは、僕の背中の背後から僕をギュッと握りしめたのであった。この時、僕はサツキに何も言わなかったが、自分のサツキに対する感情を自分で確認する事が出来たのだ。

 こうして僕は息を切らし、階段の上まで登ったのであった。するとサツキは僕に向かって、こう言った。
「ありがとうハヤトくん、大丈夫?」

 サツキは僕に申し訳なさそうに、こう聞いたのだ。この時、僕はサツキに笑顔を作って、こう答えた。
「大丈夫だよ、サツキ・・・ 昔、サツキをよく背負ってたから・・・」

 こう僕がサツキに言うと、サツキも嬉しそうに微笑んだのだ。そして二人は暫く八代神社の階段の上で昔の頃を思い起こし、見つめ合っていたのだった。

つづく・・・

第13話 友達との約束

 八代神社まで辿り着いた僕とサツキは、ユウタが待つ八代神社の一本杉へと向かおうとした。するとサツキは僕に向かって、こう言ったのだ。
「ハヤトくん。わたしは大丈夫だから、先に行って・・・」

 こうサツキが僕に言うと、僕はサツキにこう言い返した。
「サツキ・・・ サツキひとりにして、置いて行けないよ!」

 そう僕はサツキに言ったのだ。するとサツキは僕に申し訳なさそうに、こう言葉を発した。
「でも……ユウタくん、待たせちゃってるし・・・」

 こんな言葉を僕はサツキから投げ掛けられたのだ。僕はこの言葉を聴いて、サツキに向かってこう言った。
「サツキ・・・ 今日の花火大会ここから、ふたりで観よう」

 そう僕はサツキに言葉を掛けたのだ。サツキは心配そうに僕にこう言い返した。
「ユウタくんとの約束、大丈夫なの?」

 こうサツキが僕に言うと、僕はスマホをポケットから取り出しユウタに電話したのだ。そして僕はユウタとこんな会話をした。
「もしもしユウタ。ハヤトだけど、ちょっとお腹が痛くて・・・」

 こう言って僕はユウタとの約束を断ったのだ。そして僕とサツキは八代神社の境内から、二人で花火を観る事になったのであった。

つづく・・・

第14話 線香花火

 八代神社の境内から花火大会の花火を観る事になった僕とサツキであるが、二人は幼い頃、一緒に花火をした時の事を思い起こし、こんな会話を交わした。
「ハヤトくん。昔、一緒に花火した事、覚えてる?」

 こうサツキが僕に言って来たので、僕はサツキにこう答えたのだ。
「サツキ、覚えてるよ。一緒に線香花火、競争したよなぁ・・・」

 僕は笑顔でこうサツキに向かって言った。その時、サツキも嬉しそうに僕にこう話し掛けたのだ。
「ハヤトくん。いっつもムキになって……負けたらもう一回、勝負だって言ってたよねぇ・・・」

 このサツキの言った勝負とは、線香花火の火の玉がどちらが長く最後まで落ちずにいるか、と言う事を言っていたのであった。

 そんな話を二人で暫くしていると、二人の目の前に天高く大きな花火大会の花火が上がった。これを観てサツキは僕にこう言葉を掛けた。
「ハヤトくん。ハヤトくんとふたりで、花火が観られて良かった・・・」

 このサツキの言葉を聴いた僕も、今観ている花火と幼い頃、サツキと一緒に線香花火をした時の事を重ね、サツキの事をとても愛おしく感じたのだ。

 しかし僕はサツキに自分のこの気持ちを悟られまいと、自分の心の中にこの感情を押し込めたのであった。

つづく・・・

第15話 長岡の花火大会

 八代神社の境内から花火大会の花火を観ていた僕とサツキは、花火を観ながらこんな会話を交わしたのだ。
「ハヤトくん。昔、一緒に観に行った花火大会覚えてる?」

 こうサツキが僕に言うと、僕はサツキに向かってこんな言葉を掛けた。
「サツキ・・・ もしかして、長岡の花火大会に行った時の話?」

 僕がサツキにこう言うと、サツキは嬉しそうに僕にこう言葉を発したのだ。
「ハヤトくん。あの時ハヤトくんが、わたしに言ってくれた事、覚えてる?」

 こうサツキが僕に言葉を掛けると、僕はサツキに向かってこんな風に言った。
「サツキ・・・ 昔の事だから、覚えてないよ!」

 僕はこうサツキに惚けたのだ。するとサツキは僕に向かって、こんな事を言った。
「ハヤトくん。あの時、ハヤトくんからの気持ち今でもわたし、同じだから・・・」

 この言葉を聴いた僕は嬉しくなり、僕もサツキにこう言ったのだ。
「サツキ・・・ 俺もだよ、今でもサツキの事、好きだよ・・・」

 こうして僕は自分の気持ちをサツキに、正直に伝えたのであった。

つづく・・・

第16話 彼女の気持ち「最終回」

 幼い頃、二人で観た長岡の花火大会の話をしていた僕とサツキは、その当時、僕がサツキに言った言葉をサツキは覚えていてくれたのだ。

 そして、その時の僕の気持ちが今でも変わっていないか、サツキは僕に確かめたのだった。僕はサツキが自分に対する好きだと言う感情がある事を確認する事が出来た。

 すると自分の中に押し込めていた感情が、言葉として溢れ出たのだ。その言葉とは、次の様な言葉であった。
「サツキ・・・ 俺もだよ、今でもサツキの事、好きだよ・・・」

 満天の夜空を染め上げる花火が二人を照らし、その輝きと音で二人の心は突き動かされ鼓動となって鳴り響いた。もう言葉にする必要も無い、二人は時折り見つめ合い、そして花火を眺めていたのだ。

 この夏の花火大会から、僕とサツキの恋は再び始まった。だがサツキが都会の大学に進学してから、僕とサツキは次第に連絡を取る事も無くなって行ったのだ。

 そして僕は親の家業を継ぎ、今では地元の新潟市で小料理屋を営なんでいる。友達の話によるとサツキは東京の会社に就職し、今では結婚して子供もいるらしい。

 そんなサツキは僕に初恋を教えてくれた大切な想い出の女性として、今でも僕の心のアルバムの中にあるのだった。

おわり

《あとがき》

 私の書いた【短編小説】 ― 幼馴染と夏祭りの想ひ出。 ― 『夏祭り』 を読んでくださって大変ありがとう御座います。この作品は当初、全15話で完結させた作品なのですが、「第08話 想い出はなし」を追加し、全16話で完結させました。

 元々は、スマホの音楽アプリである『nana』と言うところで、1話90秒の朗読に収まるよう話しを構成し、全15話の1プレイリストで構成すると言った形で作成した作品になります。

 その為、拙いですが私の読む朗読を聴いて、この作品の話の内容がわかるよう、その辺を意識して書きました。もう少し丁寧に説明すると、登場人物のそれぞれの台詞がわかるよう、その辺を意識して書かせて頂きました。

 昨今、本離れと言われて居りますが、確かに動画などの映像コンテンツで世の中は溢れており、自分の「五感」を使って想像力を膨らませると言った機会が少なくなって居る様に、私には感じられます。

 また私が作品を書く上で、他のひとから言われた事があるのですが、私は作品を書くのに作品を「描く」と表現する事が有ります。確かに正確には「書く」が正しいのでしょうが、私の中では作品は「描く」ものだと思っています。

 読者のこころの中に私の作品のイメージが描けなければ、私自身は作品としては駄目なんじゃないかと思っているからです。今後も私は作品を描き、読者のこころの中で何か感じて貰える様な作品を書いて行こうと思って居ります。

古畑 時雄(Tokio Furuhata)

【短編小説】 ― 幼馴染と夏祭りの想ひ出。 ―『夏祭り』(朗読劇)



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