家族療法とは、問題が顕在化しているクライエントをIP(Identified PatientとかIndex Person)と呼び、IP個人の問題だけでなく、家族システムが十分に機能していない為に生じていると考え、家族システムが健全に機能するように介入していく心理療法です。
仮に、不登校の子供がいたとします。どうしても不登校の原因は何か、子供に何か問題があるのでは、という方向に意識が向きやすいです。
しかし、子供だけが問題なのだろうか…
たとえば、母親の高圧的な接し方に問題があるのかも知れません。
だが、母親の高圧的な接し方の原因には、父親の育児に関する無関心が原因としてあるのかもしれません。父親の無関心の原因は、子供が父親を軽視しているからかも知れません。
このように、家族メンバーそれぞれが問題の原因であり、結果である可能性が考えられます。
これを円環的因果律と言います。
上記の例の場合、不登校の子供だけに個人単位の心理療法を行っても、真の問題解決にはならないでしょう。
■IPと家族療法の目標
家族療法において、問題とみなされる者をIPと呼びます。そして、問題はIPひとりが原因ではなく、円環的因果律の観点に基づき、家族システムが十分に機能していないために起こっていると考えます。
そこで家族療法は、歪んだ家族システムを健全に機能する家族システムへ変容させることを目指します。
■システムズ・アプローチ
家族療法の中の歴史の中では、家族を1つのシステムとして捉え、そのシステムに変化を起こすための効果的な方法が数多く研究・開発されてきました。
中でも、代表的なものは「ジェノグラム」「円環的質問法」など、家族メンバー自身が心理カウンセラーのサポートを受けながら自分たちの相互作用を観察し、コミュニケーションのパターンを理解し変化させるための介入方法です。
「ジェノグラム」は家族関係図とも呼ばれ、問題を持って心理カウンセリングに訪れた家族を含む3世代の拡大家族を図に描いて、その家族の歴史や家族メンバー同士の相互作用を理解しようとするものです。
その作業は、通常自分の家族について聞いたり教わったりするに足る年齢に達した全ての家族成員の前で行います。この狙いは、パターンがどの様に伝承されるのか、過去の出来事が現在のパターンにどの様に影響しているか、またそれは家族の2者関係や3者関係にどのように作用するのかを示すことにあります。
「円環的質問法」とは、「あなたのその症状が軽減されたとき、一番喜ぶのは家族の中の誰ですか?」などの質問を用いて、家族メンバー同士の結束や分離、その相互影響などを知る効果的な方法です。
家族療法では、こうしたさまざまな技法によって家族のコミュニケーションのパターンを明確にし、またその背景にある家族メンバー個々人の意図や欲求などを表現してもらうよう工夫することなどによって、家族のなかに新しくより良いコミュニケーションのパターンが定着するよう援助していくことが大きな柱となります。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社