来談者中心療法(クライエント中心療法)とは、C.ロジャーズによって提唱された非指示的な心理療法です。
来談者中心療法(クライエント中心療法)では、自己概念(自己構造)と経験という2つの概念に注目します。自己概念(自己構造)とは、クライエント自身が抱いている自己像で、クライエントの理想が反映されている姿です(理想自己)。
経験とは、クライエントが現実に体験していることです(現実自己)。
そして、自己概念(自己構造)と経験の重なりを自己一致と呼び、自己一致の領域が大きいほど適応的であるとしました。
不適応状態に陥っているクライエントは自己一致の領域が小さいです。しかしロジャーズは、人は誰もが自己概念(自己構造)と経験を一致させていこうとする自己実現傾向を持つと考えており、カウンセラーとの適切な関係性さえあれば、クライエントは自己実現傾向を発揮できるよう自ら変化していけると述べています。
この「適切な関係性」を築くためには、カウンセラーに3つの態度が求められています。
①共感的理解
クライエントの私的な内的世界を、あたかもクライエント自身であるかのように感じ取ることです。
共感的理解によって感じ取ったことを、クライエントに反映することを通して、クライエントが自分自身の理解に至ることを援助します。
②無条件の肯定的関心(受容)
クライエントのどの様な側面にも偏りなく肯定的で積極的な関心を向けることです。
カウンセラーが無条件にクライエントを受容することによって、クライエント自身もあるがままの自分を受容することが可能となります。
③自己一致(純粋性・真実性)
カウンセラー自身が自己一致の状態にあることです。
自己一致しているカウンセラーと接触することによって、クライエントも自己一致の状態を目指すことができます。
これらの3つの態度条件をそろえたカウンセラーとの関係を通じて、クライエントはあるがままの自分とその問題に気づき(自己洞察)、あるがままの自分とその問題を受け入れ(自己受容)、より自己一致した状態に近づいていくこと(自己実現)が可能となります。
来談者中心療法(クライエント中心療法)の最終的な目標は、自己実現したクライエントが自分で問題を解決していける「十分に機能する人間」となることです。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社