ロールシャッハ・テストとは、ロールシャッハが開発した投影法(投映法)のことを指します。投影法とは、曖昧で多義的な刺激に対する被検査者の自由な反応を得て、それを分析することで被検査者の性格特性を把握しようとする性格検査の総称です。
左右対称のインクの染み(曖昧な刺激)が何に見えるか答えてもらい(被検査者の自由な反応)、その反応内容を分析します。
図版は白黒5枚、カラー5枚、また判定方式としては包括システムが普及していますが、日本では伝統的に片口法という判定方式が用いられることが多いです。
■投影法の利点
①無意識的側面がとらえられる
投影法では、被検査者の自由な反応に無意識的な側面が反映されると考えます。そのため、質問紙法では明らかにならない無意識面の性格特性が明らかになることがあります。
②回答のバイアスが生じにくい
検査の意図が読み取られにくいため、自分をよく見せようとしたり、虚偽や誇張をしたりすることが困難で、回答のバイアスが生じにくいです。
■投影法の欠点
①検査者の主観的解釈
解釈に検査者の主観が入るため、検査者による解釈の違いが生じやすいです。主観を廃するための判定基準に関しても、判定の根拠が薄弱なものが多いです。
②集団実施が困難
基本的に検査者と被検査者の1対1で行うことが多いです(検査により例外有り)。
③検査者の熟練が必要
投影法の実施・結果の解釈には熟練が必要とされます。検査者の熟練によって検査結果が左右される可能性があります。
④被検査者の負担
被検査者は何を測られているかわからないため、不安を抱きやすいです。選択肢ではなく自由な回答を求められるため、心理的な負担も大きいです。
場合によっては中断せざるを得ない場合もあります。ロールシャッハ・テストの場合、よくわからないインクの染みを何枚も見せられて、自分の回答がどう判定されるかもわからないまま、何に見えるか答え続ける…と考えれば、その負担の大きさがわかるでしょう。
⑤言語能力に依存
反応として言語報告をするものが多いため、投影法でも被検査者に一定の言語能力が必要となります。ただし、描画法を用いることでこの欠点をカバーすることができます。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社