ビネー式知能検査とは、ビネーが開発しターマンによって実用化されたビネー式知能検査です。このビネー式知能検査には2の特徴があります。
①精神年齢を測定
各年齢群の児童の50%~70%が正解できる項目をその年齢の標準問題として設定します(例:例えば、8歳児の50%が正解する項目があれば8歳用の問題として採用します。8歳児のほとんどが不正解だったり、ほぼ正解だったりする問題は8歳用の問題として不採用とします)。
例えばある児童が、8歳の標準問題は正解できたが、9歳の標準問題を正解できなかった場合、その児童の精神年齢が8歳と測定されます。
②知能指数の算出
知能指数(IQ)はシュテルンによって発案されました。精神年齢÷生活年齢×100で表されます。例えば生活年齢(実年齢)10歳の児童が精神年齢12歳だった場合は、12÷10×100で、IQ120となります。IQは100を標準とします。
■ビネー式知能検査の欠点
ビネー式知能検査は世界初の知能検査であり、広く普及することとなっていきましたが、幾つかの欠点をもっていました。
1つは全般的な知的発達度はわかるが、知的能力ごとの違いはわからない点でした。例えば精神年齢8歳と測定された児童の中には、言語的な能力が優れている児童もいれば、数の能力に優れた児童もいるはずです。
だが、そのような知的能力ごとの違いはわからず、全体として8歳児レベルの知的発達度をもっている点のみ判明します。このことから、ビネー式知能検査を概観的知能検査と呼ぶこともあります。
もう1つの欠点は、児童のみを主な対象としている点です。特に精神年齢は成人以降、意味をなさないことが多いです(精神年齢が20歳だろうと21歳だろうと、大きな違いはない。生活年齢20歳・精神年齢30歳の人を、30÷20×100=IQ150の天才と呼べるだろうか?)。
そのため、かつてのビネー式知能検査は児童用に限定されていました。
■現在のビネー式知能検査
現在、日本で一般に用いられているビネー式知能検査の最新版は、田中ビネー知能検査V(ファイブ)です。
では、成人以降の精神年齢を算出せず、平均的な知的能力と比較してどの程度の知的能力を持っているかを示す偏差知能指数(DIQ)を用いることで、成人も測定対象に含めています。
また、全般的な知的能力だけでなく領域ごとの評価も導入されており、欠点の改善が図られています。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社