ベンダー・ゲシュタルト・テストとは、ベンダーが開発した作業検査法です。図形9つを1つずつ提示し、時間制限を設けずに模写します。
図形はゲシュタルト心理学の創始者、ウェルトハイマーによるものです。描写の正確さ、線の乱れなどに注目し、脳機能の障害を査定します。
人格の成熟度、知的側面の遅れなどを判断することもあります。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
2020-04-21のアーカイブ
【内田クレペリン精神作業検査】
内田クリペリン精神作業検査とは、クリペリンが考案した作業を、内田 勇三郎が検査として改良した作業検査法です。
作業検査法は、被検査者に簡単な作業を行わせて、その作業結果から性格特徴をとらえる方法です。
■作業検査法の利点
①集団実施が可能
一度に多人数に実施することが可能です。
②回答のバイアスが生じにくい
性格検査と気づかれにくく、意図的な回答の歪を排除することができます。
③言語能力に依存しない
作業が中心であるため、言語が困難な対象に対しても実施可能です。
■作業検査法の欠点
①情報量の少なさ
1つの作業検査法から得られる情報量はさほど多くないです。表面的で限られたパーソナリティの側面しか判断しません。
②分析者の主観的解釈
結果の判定に分析者の主観が混入します。そのため、結果の解釈には熟練を要します。
③内容の単調さ
作業が単調かつ時間がかかるため、被検査者に負担がかかります。
ランダム数字が、上下2段に17行ずつ印刷された検査用紙を用います。また、健常者の作業曲線は定型曲線と呼ばれており、以下の特徴を持ちます。
1)最初の1分の作業量が最も多い(初頭努力)
2)最後の行(15分目)が次に多い(終末努力)
3)前半よりも後半の方が作業量が多い(休憩効果)
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【風景構成法】
風景構成法とは、中井 久夫が開発した描画法(描画投影法)です。統合失調症者との言語的交流を補うために創案されました。
A4用紙に「川、山、田、道、家、木、人、花、動物、石」を順に描いてもらい、1つの風景を完成させます。
統合失調症者は、風景構成が瓦解し描けなくなることが多いが、回復過程で描けるようになっていきます。このように、風景全体の構成に注目します。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【動的家族画】
動的家族画とは、バーンズが開発した描画法(描画投影法)です。A4用紙に「家族が何かをしているところ」を描きます。
家族画には、個人のパーソナリティだけでなく、家族間の関係性や対人関係の態度が投影されると考えます。
家族成員同士で画を見せ合うことで、家族集団全体の力動性を知ることも可能です。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【HTPテスト】
HTPテストとは、バックが開発した描画法(描画投影法)です。家、木、人(House、Tree、Person=HTP)の順に、それぞれ別のB5の画用紙に描きます。
家には家庭環境が、木には無意識的な自己像が、人には現実に認識している自己像が、それぞれ反映されやすいです。
描画終了後、描いた絵について64の質問を行います。この質問をPDI(Post-Drawing-Interrogation)と言います。
描画という非言語的な側面と、PDIによる言語的側面の両面からアプローチが可能です。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【バウムテスト】
バウムテストとは、ゴッホが開発した描画法(描画投影法)です。この描画法は被検査者に絵を描いてもらい、その絵を分析することで性格特徴を把握しようとする投影法の一種です。
特に、言語表出が困難な年齢や症状をもつ対象に対して実施可能な点が大きな利点として挙げられます。
また、絵を描く行為そのものが自己表現に繋がり、治療的な効果をもたらす場合もあります。
だが投影法の一種であるため解釈が困難であることや、検査者の主観が解釈に混入することなど、投影法の欠点の多くは描画法にも当てはまります。
A4用紙に「実のなる木を1本描いてください」と教示します。そして、描かれた木の大きさ、形、バランスなどから被検査者の特徴を推測します。
あくまで補助的な理解にすぎず、性格特徴や発達的側面の全てがわかることはありません(テスト・バッテリーの1つとして用います)。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【SCT(文章完成法)】
SCT(文章完成法)とは、不完全な文章が提示されその文章の続きを完成させていく投影法(投映法)です。
例)私は子どもの頃・・・(この続きを自由に書く)
投影法ではありますが、意識的な側面が反映されやすいです。また、回答の歪みが生じやすいです。
例)私は子どもの頃「いつもニコニコしていた」
→ただし、本人がそう意識しているだけで、真実は異なる可能性がある。
また、事実と歪めて回答している可能性も否定できない。
以上のように、投影法ではあるが質問紙法的な特徴を持ちます。
SCT単独で用いられることは少なく、テストバッテリーの一貫として用いられることが多いです。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【P-Fスタディ】
P-Fスタディとは、ローゼンツァイクが開発した投影法(投映法)です。欲求不満場面が描かれたマンガのような絵の吹き出しに自由にセリフを書き入れてもらい、それを分析します。
Pはpicture、Fはfrustrationを表します。その名の通り、絵を用いて欲求不満耐性を測定する検査です。
絵は24枚、吹き出しのセリフを書き直すときは、消しゴムで消さずに線を引いて修正します。他の投影法と比較して、回答の自由度が低めです。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【TAT(主題統覚検査)】
TAT(主題統覚検査)とは、マレーとモーガンが開発した投影法(投映法)です。絵から自由に物語を創作してもらいます。
創作された物語の主人公の行動に被検査者の欲求が、主人公の周囲で起きる出来事に被検査者が環境から受ける圧力が、それぞれ反映されていると考えます(欲求-圧力理論)。
図版30枚と白紙1枚の計31枚からなり、被検査者によって図版を使い分けます。
子ども用のCAT、高齢者用のSATが存在します。ロールシャッハ・テストと比較して判定方法に関する研究が少なく、判定方法が確立しているとは言い難いです。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社
【ロールシャッハ・テスト】
ロールシャッハ・テストとは、ロールシャッハが開発した投影法(投映法)のことを指します。投影法とは、曖昧で多義的な刺激に対する被検査者の自由な反応を得て、それを分析することで被検査者の性格特性を把握しようとする性格検査の総称です。
左右対称のインクの染み(曖昧な刺激)が何に見えるか答えてもらい(被検査者の自由な反応)、その反応内容を分析します。
図版は白黒5枚、カラー5枚、また判定方式としては包括システムが普及していますが、日本では伝統的に片口法という判定方式が用いられることが多いです。
■投影法の利点
①無意識的側面がとらえられる
投影法では、被検査者の自由な反応に無意識的な側面が反映されると考えます。そのため、質問紙法では明らかにならない無意識面の性格特性が明らかになることがあります。
②回答のバイアスが生じにくい
検査の意図が読み取られにくいため、自分をよく見せようとしたり、虚偽や誇張をしたりすることが困難で、回答のバイアスが生じにくいです。
■投影法の欠点
①検査者の主観的解釈
解釈に検査者の主観が入るため、検査者による解釈の違いが生じやすいです。主観を廃するための判定基準に関しても、判定の根拠が薄弱なものが多いです。
②集団実施が困難
基本的に検査者と被検査者の1対1で行うことが多いです(検査により例外有り)。
③検査者の熟練が必要
投影法の実施・結果の解釈には熟練が必要とされます。検査者の熟練によって検査結果が左右される可能性があります。
④被検査者の負担
被検査者は何を測られているかわからないため、不安を抱きやすいです。選択肢ではなく自由な回答を求められるため、心理的な負担も大きいです。
場合によっては中断せざるを得ない場合もあります。ロールシャッハ・テストの場合、よくわからないインクの染みを何枚も見せられて、自分の回答がどう判定されるかもわからないまま、何に見えるか答え続ける…と考えれば、その負担の大きさがわかるでしょう。
⑤言語能力に依存
反応として言語報告をするものが多いため、投影法でも被検査者に一定の言語能力が必要となります。ただし、描画法を用いることでこの欠点をカバーすることができます。
【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社