【身体表現性障害】

「身体表現性障害」とは、医学的に説明不能の身体症状や身体的なとらわれを特徴とする疾患の総称です。

医学的に検査をしても身体的な原因は発見されず、身体症状の原因は不安や葛藤、ストレスなど心理的要因と考えられます。

身体表現性障害には、特定の行為や責任を回避できたり、周囲の心配や関心を得たりできる疾病利得が隠されている場合があります。

ただし、意識的に病気を偽っているわけではない点に注意したいです。また、特有の性格傾向としてアレキシシミア(アレキシサイミア)があげられます。

身体症状や事実関係は述べられるが、自身の内的な感情や葛藤を表現することは困難です。そのため、内的な感情や葛藤が身体症状となって現れると考えられています。

症状として、身体表現性障害の主な下位カテゴリーに以下の5つがあります。

①転換性障害
知覚や運動の麻痺、具体的には視力の喪失や失声、手足の痺れや失立・失歩などの症状が現れる。神経系の異常が疑われるが、神経系の異常は発見されない。

②身体化障害
医学的には身体因を見いだせない頭痛、疲労感、アレルギー、腹痛、頻尿などの複数の身体症状が、数年間反復的に持続します。

③疼痛性障害
激しい苦痛を訴えるが、医学的検査をしても異常が認められない。痛みは主観的な体験であるため、適切な診断を下すことが困難です。

④身体醜形性障害
自身の外見(顔のしわ、毛深さ、鼻の形や大きさなど)が異常と思い込んでしまう。整形手術を繰り返し受ける者もいるが、苦痛が和らぐことは少ないです。

⑤心気症性障害
心身の些細な感覚に敏感に反応し、重大な病気ではないかと思い込んでしまう。自分の意見を支持してくれる診断を受けるまで、医療機関を転々とする者もいます。

カウンセリングとしては、身体表現性障害の心理的援助は、クライエントさんが抱くストレスや不安に適切に対処できるように、暖かく受容しながら見守ることが有効ではないでしょうか。

身体表現性障害は、かつての心身症に代わる新しい概念ですが、定義が安定していません。そのため「心身症は身体表現性障害」と表現する出版物もあれば「心身症は身体表現性障害と区別される」と表現する出版物もあります。

心理的要因の改善を重視する立場に前者が、身体症状の改善を重視する立場に後者が多いようですが、確定は出来ておりません。



【参考文献】
宮川 純『臨床心理士 指定大学院対策 心理学 編』河合塾KALS監修 講談社