人間の特徴を研究したA.ポルトマンは、生理的早産にあると教えている。
すなわち、人間の胎児は頭脳が他の動物と比べて急速に発達するために、身体が十分に発達しないうちに生まれてくる。この生理的早産は人間特有な存在形式と深い関係がある。
人間は、新生児の時に環境に特別に依存し、環境から多くのものを吸収し、自己の精神を形成していくのである。
この結果、人間の特別な世界、すなわち「文化」と呼ぶ世界を創造して、その中に生活するようになるのだ。
ポルトマンは、これについて「文化」こそは、たとえ『もっとも原始的』な人間であろうとも持っている。正しく文字通りもっとも一般的な意味での人間の行動様式の一部だからであると説いている。
動物の本能的な行動を『環境に制約された』と呼ぶならば、人間の行動は『世界に開かれた』と言わなければならない。
この場合、この素晴らしい言葉が意味するのは、人間の創造的な行動という偉大な能力のことであり、これは個々、人が多かれ少なかれ、それ相応に使用することが出来る一つの宝であり、またそれを浪費したり、あるいは埋もれさせたり出来る一つの財産でもある。
この様に世界に開かれ「文化」へ向けて発達していくのが人間の特色でもあるが、このために人間は環境に対して他の動物とは違った関係を持つのである。すなわち、人間は環境に意味を持たせることもできるし、また、時間空間的に離れてしまっても、環境について表象を持ち、考えることも出来る。
さらに、人間はこの表象とした環境を対象化できるのである。こうして人間は他の動物と異なり、主観的であるとともに客観的になりうるのである。これを一言で言えば、人間は精神的動物であるということになるであろう。